粉々 >

粉々

 

 6年前までとある自動車会社でエンジンの摩擦を下げる技術開発をしていました。エンジンの摩擦が下がると、今まで通りアクセルを踏み込まなくても馬力が出るので燃費が良くなります。

 そこで私はエンジンの中の擦れ合う部品に目に見えないくらいの小さなデコボコ(凸凹)を付けてみました。ボコ(凹)の部分は勿論へこんでいるので擦れ合わずエンジンオイルが溜まってくれて、そこから実際に擦れ合うデコ(凸)の部分にオイルを供給してくれて滑らかに擦れ合うようになって摩擦が下がるんじゃないのかな?と思ったのです。

 これは成功し、摩擦が下がったので量産車のエンジンに採用してもらいました。この擦れ合う表面に凸凹を付けるのが、弊社の微粒子投射処理です。 この処理はデコボコを付けたい表面に圧縮空気でメディアと呼ばれる硬い微粒子を勢いよくぶつけます。そうするとデコボコがお気楽極楽の簡単, 短時間で来上がります。これだけです。本当に簡単に作れるんですよ!

 先に書いた目に見えないくらいの小さなデコボコを作るためのメディアである微粒子は用途に応じさまざまなものがありますが、本当に細かいので、小麦粉とかのような粉のようですよ。

 さて時代はエンジンから電気自動車に代わろうとしてますよね。そんなわけで子供の頃からエンジン大大大好きだった私は泣く泣くエンジンとはおさらば転職し、粉体付着抑制に手を染めることに相成りました。粉のようなものをぶつけてデコボコ作って摩擦を下げてたのに、今度は粉がくっ付かないようにするのだから、人生デコボコですな。 はぁ???

 しかしまぁ、やってみると粉がくっ付かないようにするのは面白いけど難しいです。例えば小麦粉の一粒一粒を皆さん見たことありますか?目では一粒一粒のように見えるけど、顕微鏡で拡大してみると大体たくさんの粒々が集まってくっ付いてます。凝集しています。湿気があるとその集まってる粉々はより固まって、静電気があるとその粉々は異様にくっ付いて取れないし、粉ったっていろいろあり千差万別だし、とかとか。そんな事を考え出すと、もう頭の中が粉々になってしまいます。エンジンの摩擦下げて燃費良くするのとは大違い。身を粉にして(ホントかなぁ?)研究開発しないと、なかなか粉々の付着抑制は実現しません。

 日夜(いや、夜はちゃんと寝てました。残業違反はしてないですよ)粉まみれになっていろいろ実験していくうちに、こうすれば粉の付着を防げるんだね、というのが見え、付着抑制が実現して来ました。

 今現在は、古今東西,ありとあらゆる粉とは申しませんが、お客様から 「この粉の付着抑制の表面処理をお願い!」 と依頼を頂いたら、かなり付着抑制を実現出来ています。そして粉ばかりでなく粘着物や、樹脂フィルムの滑り性向上とか、網などでの液体の通過性向上、付着した表面の洗浄性向上、等々、そういった課題に対してもお応え出来ています。

 そんなわけで、エンジンの摩擦低減、いや、いろいろなものの付着抑制, 滑り性向上, 洗浄性向上, 等々、是非一度ご相談くださいませ。

 デコボコ付けるという表面の形状を変えるだけの付着抑制なので、コーティングやめっきとは原理的に異なり、膜が剥がれそれが異物として混入となる懸念も全くありませんので、安心して採用頂ける表面処理です。どうぞ宜しくお願い致します。